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EGO(アニメーションから見る心の3構造と、生と死の葛藤)

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今年の5月くらいにニコニコ動画で総合1位になっていた「EGO」というタイトルの数分の映像が印象深かったので紹介しておきたい。
(Youtubeでもアメーバビジョンでも探したけど見つからないや・・(´・ω・`))
ゲームのサイレントヒルではないが、洗面所に開いた鏡の穴の中に入り、その中にある異世界の中でもう一人の自分を追い回すストーリーである。

「EGO」(※コメント非表示推奨 右下のヒヨコのアイコンを一回クリック)


ほとんどの人は見てもさっぱり意味不明な不思議な映像だったと思うが、ここには心理学の重要な裏が隠されている。

フロイトによれば人の心は3構造になっている。
それは、神経症の話でもしたように、
1:超自我
2:自我(エゴ)
3:エス(Es)
の3つである。

「1:超自我」はルール、道徳観、倫理感、自己の規制、防衛機制など、簡単に言うと
=親や周囲などの環境から教えられたしつけ」を指す。

「3:エス」は感情、欲求、衝動など、簡単に言うと
=動物的本能」を指す。

このように超自我エスは両極端にある。

この2つを真ん中で仲介して管理しているのが「2:自我(エゴ)」である。
言わば、超自我とエスを中間で管理するコントロールセンターである。

(ちなみに利己主義であるエゴイズムや、自己愛性やジャイアニズムとはここでは意味が違う)

そして「3:エス」である動物的本能の中では
エロスタナトスの2つがある。
エロスは種族繁栄などの「生への本能」で、タナトスは自殺願望など破滅的な「死への本能」である。
エロスが生きたい愛したい、タナトスは死にたいと叫んでいる。
エロスのこのエネルギーを「リビドー」と呼び、タナトスのこのエネルギーを「アグレッション(攻撃性)」と呼ぶ。
このように、心はリビドーとアグレッションが綱引きしている
(ちなみにこのエスを無理矢理押し込めると、神経症やヒステリのエネルギーになる)

この映像では、「髪の毛のある男」と「髪の毛のない男(ハゲの男)」が出てくる。

最初、鏡の前で対峙しているときには、
髪の毛の男には「全てを復元する力」が備わっている。
ハゲの男には「全てを破壊する力」が備わっている。

その後、髪のある男がハゲの男を追って鏡の中に入ったときには、この力が逆転する。
髪の男が「破壊する力」
ハゲの男が「復元する力」
になる。

鏡の向こうの世界がすでに荒廃して「破壊されている」ことにも注目である。
(復元する力のある髪の男が最初に鏡を壊したことも、ハゲに対して悩みがあったのか、自我自体にそのような葛藤があったためと思われる。)

そしてまた、映像の中間あたりの橋でお互いに手を近づけたときに、能力が逆転する。
髪の男が「破壊する力」
ハゲの男が「復元する力」
になる。

おそらく
復元する力エロス(リビドー)」」で
破壊する力タナトス(アグレッション)
を表しているのだと思われる。

もしくは
復元する力超自我

破壊する力エス
を表しているとも考えられる。

この力が相互に入れ替わりながら、葛藤を繰り返していく。

最後に、髪の男は、自分が追えば追うほど、ハゲの男が逃げていくことに気付く。

そこで、髪の男は後ろに後ずさりをはじめ、自らの頭を自らの手で触る。
すると、同じようにハゲの男も自らの頭を自らの手で触る。

その後、ハゲの男は自らの髪の違いに気付いて硬直する。

髪の男が状況を克服できたのは冷静に物事を分析して洞察できたからである。
いくら追い求めてもいつまで経っても追いつかなかったにもかかわらずである。
入り口の鏡の前にハゲの男が来て、入れ替わってしまうのではないか、という危機感が髪の男に出たときに初めて、自分を客観視し、欲望をありのままに観察し、その欲望を捉えることに成功した。
意識の力で無意識を捉えたと捉えても良い。
思考をコントロールすることに成功したのだ。

こうやって心は常にこの葛藤を繰り返し、事実に対して洞察し、思考をコントロールしながら自我は無限に成長していくのである。
欲求は追い求めるのではなく、ありのままを見つめ、気づき、観察し、認め、許さなければ抑圧するだけで消えないのだ。
(「ブッダの瞑想法―ヴィパッサナー瞑想の理論と実践(地橋秀雄 著)」・「気楽なさとり方 (宝彩有菜 著)」 参照)

これは一種の認知行動療法や内観療法や森田療法などの心理療法や、ヴィパッサナー瞑想などの瞑想法に近しい物を示唆している。

自我(EGO)を表現しようとして2つの相対する力が、自我の中に対照的に介在している事実を見事に表現した映像だと思う。

最後の最後で、元の世界に戻ったときに鏡の奥の自分は、髪のある自分でも、行動が後ろ歩きなのだ。
見た目は変わっても、いつでも欲求は介在していることを表している。
そのある種の恐怖や不安も視聴者に対して訴えているのではないか。

精神科医のハリー・スタック・サリバンは、人間には
満足を求めるニーズ」と「安心感を求めるニーズ」という2つの基本的動機があり、
人間は対人関係を欲する動物である」と言っている。

その自己愛の三大ニーズは「鏡、理想化、双子」である。

自分を慕ってくれる人を自分が求めることを「鏡」
自分の尊敬する人を自分が求めることを「理想化」
自分の気の知れた仲間を自分が求めることを「双子」
という。

これを踏まえて、精神分析学者のハインツ・コフートは
自己愛を満たすためには自己対象となる他者の存在が必要である」と言っている。

あとはあえてここで言及することなく、みなさんの推測にお任せしたい。

おまけ 「EGO」の逆再生(※コメント非表示推奨 右下のヒヨコのアイコンを一回クリック)


参考文献









人に悩みを植え付ける根源である神経症・人格障害者への考察・対処法まとめリンク
http://aikansyheiwa.blog21.fc2.com/blog-entry-243.html
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テーマ : 心、意識、魂、生命、人間の可能性
ジャンル : 心と身体



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touhuさん、お久しぶりです。
コメントありがとうございます。

>最近、人のことを考えないコメントをする人がいるけど、気にしなくてもいいと思います。
お気遣いありがとうございますm(_ _)m
自分もネット歴もそこそこ長いのでこういうのは慣れたものです(ノ´∀`*)

FC2ではコメントも拒否設定で管理できるので、悪質なコメントは事前に拒否することでゴキブリホイホイのように逆に手間が省けます。

EGOもあくまで参考くらいに見てみると、中々奥深いものがありますね。

心理学的にも非常に良い参考になると思います。

最初に「鏡」が出てきたのは良い隠喩だと思います。

EGOについて

最近、人のことを考えないコメントをする人がいるけど、気にしなくてもいいと思います。

 EGOの動画は、おもしろいと思います。自分だったら、動画を見て「すごいなあ。」とか「作者は神だな。」とかの印象しか受けれないのに、その動画の心理的な解説を行っていて、この動画の面白さが深くなりました。

 
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心の安全が第一. Psychologist/Counselor/OPE Palliative Nurse/LPi 経営者CEO/Invest.国立大学/教育学/心理学→医学/看護学→総合病院。自己愛研究/医療統計。心理、医療職。心理/医療/経済の話題。

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