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正直者はバカを見るか?~信頼と安心のコスト~

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日本の「安心」はなぜ、消えたのか 社会心理学から見た現代日本の問題点日本の「安心」はなぜ、消えたのか 社会心理学から見た現代日本の問題点
(2008/02/26)
山岸 俊男

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大学内の社会心理学の講義でこの話題が面白かったので、講義内での参考文献も読んで、自分の知識も絡めてまとめました。

バカなんて汚い言葉を使ってごめんなさい。

結論から言うと『正直者の人はバカを見ない』という科学的(近代学問)な実験の証明ですので、安心して下さい。

前回「中国や朝鮮と仲良くできるか?~日本が選べる3つの道~」
http://rextuseferu.seesaa.net/article/143265102.html
から少し絡んできています。

今後、中国人のあの「嘘つき(不正直)」の伝統が、今後どう社会心理学的に影響するか、またリバータリアン国家ならどう影響するかという話に繋げていくための前置きです。


社会心理学で「信頼と安心」という言葉があります。

「信頼」とは、
相手のことがよく分からなくても「この人のことはよく知らないけど付き合わないといけない」
・・という状態のことです。


「安心」とは、
相手のことをよく分かっていて「この人なら自分から何か搾取しないな」
・・という状態のことです。


日本とアメリカの高校生の調査では、

●「たいていの人は信頼できるか?」
はい・・アメリカ47%
はい・・日本26%

●「他人はあなたを利用しようとしていると思うか?」
いいえ・・アメリカ62%
いいえ・・日本53%

●「たいていの人は他人の役に立とうとしていると思うか?」
はい・・アメリカ47%
はい・・日本19%

このようにアメリカと比較すると、日本は信頼度が低いことが分かります。
これは日本人は「安心」を求める傾向が強いため「信頼」が弱く、
逆にアメリカ人は「信頼」を求める傾向が強く「安心」が弱いです。

この違いは、それぞれの国の社会における危険が起因しています。

そのように自分の身が危険にさらされる状態のことを「社会的不確実性」と言います。

「安心」の場合(相手のことをよく分かっていて「この人なら自分から何か搾取しないな」という場合)は社会的不確実性が低くいです。
日本はこのタイプです。

「信頼」の場合(相手のことがよく分からなくて「この人のことはよく知らないけど付き合わないといけない」)は社会的不確実性が高いです。
アメリカはこのタイプです。

(この不確実性を取り除くのは担保やコミットメント関係[他の利益以上に関係を大切にすること=日本で言うとヤクザのような”義”]などの「契約」を結ぶ必要があります)

この違いは、それぞれの国での企業の姿勢と利益を大きく左右させます。
それは企業の取引や機会の「コスト」を考える時に、顕著に表れます。

取引コストとは、相手が信頼できるかの調査にかかる費用のことです。

機会コストとは、[別の相手と取引すれば得られたはずの利益]-[現在の利益]のことです。

日本では、機会コストが取引コストを上回っているため、
閉じた関係(安心)のままで、損が増えていきます。

もう少し分かりやすく言うと、例えば、日本では会社の水道が壊れてもコストの安い業者に修理を頼もうとはせず、昔から馴染みのある業者にコストが高くても頼もうとする傾向があるので損をしていると言うことです。

ある意味で”義”を重んじるヤクザ型社会とも言えます。

そもそも日本で市場や企業に対する規制が強いのは、外部からの競争から隔離されることで安定した利益を確保できるからです。
つまり「安心」を求めていることになります。

しかし、それは競争力の低下に繋がります。

日本のこのような社会のことを「集団主義社会」と呼びます。

集団主義社会とは「集団内部では搾取せず、警戒せず、協力していきましょうね」という社会のことです。
しかし、そうすると自分の属する集団以外は差別し、自分の属する集団をひいきする傾向も出てきます。
社会心理学者のタジフェルは、ランダムに集団を分けてもこの傾向が出ることを発見し「最小集団パラダイム」と呼びました。


「安心」が強いと、競争を避けるために市場や企業への規制が強くなり、集団主義社会になり、他集団を差別し、損もしやすいのです。

この「安心」の呪縛から解き放たれるためには、日本の内集団での「安心」ではなく「信頼」を強める必要があります。

よく「信じるものは騙されやすい、正直者がバカを見る」とか言われますが、これは言い換えると「他人を信頼しやすい人は騙されやすい」と言うことです。

しかし実は、実験では真逆の結果になります。

『他者の信頼性判断の正確さと一般的信頼-実験研究』
菊地雅子・渡邊席子・山岸俊男(1997)
The Japanese Journal of Exprimental Social Psychology.1997,Vol.37, No. 1,pp23-36
http://www.jkokuryo.com/literature/bs/review/si/kikuchi.html
より

ここからも分かるように、
「信頼の高い者」は他人が信頼できるかという情報に対して”敏感”なため、騙されにくいです。
つまりどういうことかと言うと、他人のことをよく知らなくてもその人を信じれる人は、周囲にいる者からもその未知な他人の情報を得ることができるので、事前に騙されずに回避できるということです。

逆に「信頼の低い者」は情報”鈍感”なので騙されやすいです。
つまり「自分は他人を安易に信じない」という態度だと、未知な他人に会った場合に、その周囲の人からも情報を得られないので、その未知なる他人に騙される傾向が強いです。

よって
「正直者で、未知な他人でも信頼する傾向のある人」は「騙されにくい」です。

だから『正直者の方はバカを見ません』。

『人間不信の強い人の方が騙されやすく、バカを見ます』。

日本人は表面では「信頼が大切」と言いながらも、実際は「安心」の感覚でグローバルに経済や社会を展開しているので「信頼を求めていたのに裏切られて損をした」という傾向が強いのです。

これはそもそも信頼ではなく「安心」を求めていたのに気付いていないことが問題です。


参考文献

やっぱり正直者でいこう!山岸俊男のおもしろ社会心理学講義


「”信頼と構造”こころと社会の進化ゲーム 」
山岸俊男(東大出版 1998)

信頼の構造―こころと社会の進化ゲーム信頼の構造―こころと社会の進化ゲーム
(1998/05)
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「安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方」
山岸俊男 著(中公新書 1999/06)

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人に悩みを植え付ける根源である神経症・人格障害者への考察・対処法まとめリンク
http://aikansyheiwa.blog21.fc2.com/blog-entry-243.html
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テーマ : メンタルヘルス
ジャンル : 心と身体



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りびゅあさん。コメントありがとうございます!
一言一言に「そうだよなぁ」と共感してコメントを読ませていただきました。

日本人は安心を求める傾向が強いんですよね・・。
しかし「神経症的な競争」に関しては凄まじい劣等感の競争を発揮しています。
神経症的競争とはフェアな条件の上で「勝った、負けた」で競争する通常の競争ではなく、
「自分が勝つことが当たり前で、しかもその分、相手が不幸にならなくてはならない」という心理的な競争のことです。

この競争を、現在は会社の本流ポストに残ることを目指してやっているわけですが、本来の会社の目的から著しく離れてしまうので結果的に社内環境を悪くして心理的に疲れる社員を量産する一旦になっていると思います。

政権は変わりましたが

つくづく日本社会は機会損失の多い集団なのだとわかりました。
そんな中で埋もれてしまっている優秀な才能がどれだけホコリをかぶっているか知れませんね。
今まで何十年も同じ政権が居座っていたことで受けた損失の大きさを見ればわかります。
とはいえ、政権は変わりましたから、
私たちはようやく、安心よりも信頼の大事さに気が付き始めたのかもしれませんね。
さて、今後どうなるやら・・・。

やっぱり日本人は変

なるほど、信頼とはそういう意味でしたか。
たいへん勉強になりました。
確かに、日本人の社会とは訳もなく人を信じたり、疑ったりしていて、何だかロジックがおかいし人が多いんですね。
欧米では、他人をもっと公平に(客観的)に評価していると思います。
ビジネスでのしがらみを見ればわかりますね。
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心の安全が第一. Psychologist/Counselor/OPE Palliative Nurse/LPi 経営者CEO/Invest.国立大学/教育学/心理学→医学/看護学→総合病院。自己愛研究/医療統計。心理、医療職。心理/医療/経済の話題。

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