若い時に悪いことした人は将来成功するか?

若い時に悪いことした人は将来成功するか?
結論から言うと、まずそのようなことはありえません。
理由は、思春期(7歳頃~15歳頃まで)は、まだ「自分を共感してくれる人」、「自分の将来の方向性を示してくれる人」という「対象」を探す時期なので、その対象なしに、自由に放り出すと悪い方向へしかいかないからです。
例えば、親が暴力的で家出して逃げ込んだ家の人に優しくしてもらえた、父母は虐待的でも祖父母は優しかった、復讐のための傷の舐め合いではなく良い意味で共感してくれる友人が出来た、先輩が助言してくれたなど、対象が親以外に見つかれば救われますが、少なくても「悪いこと」をする時点でそのような体験とは縁薄いです。
そしてその負の連鎖が、将来的にも続いていきます。
よく「若い頃ちょっと悪いことやった奴が社会で成功する例もあるから不良やっても良いだろう」と言う人がいますがあれは嘘です。
確かに作家のジェイムズ・エルロイのように、若い時から泥棒・麻薬・アルコール中毒などその他犯罪の限りを尽くしながらも成功したかのように見える人はいますが、その逆境からのギャップが際立って成功して「見える」だけで、実際にはそうはなっていません。
この話はアメリカでは議論されつくしたような話です。
アメリカで1950年代後半から1960年代において、フロイトの娘のアンナ・フロイトは、弟子でアイデンティティの提唱者でもあるドイツ人のエリク・ホーンブルガー・エリクソン(フロイトはドイツ系ユダヤ人なのでそのユダヤ人脈)とともに「10代ではアイデンティティ確立のためのモラトリアム(猶予期間)や反抗期を尊重しなければならない。」ということで徹底的な自由主義を取りました。
(転載はじめ)
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校則や服装は自由となり、大学の入学も大幅に緩和された。しかしながら、この自由化が進んだ六〇年代後半からの二十年間で、少年犯罪の増加やドラッグの流行は目を覆わんばかりとなった。もちろん少年のあいだは少々非行をしても大目に見てやれという理論だから、これ自体は予想どおりの結果なのかもしれない。しかし、子どもの心に与える影響はけっして好ましいものではなかったようだ。その二十年間に十五歳から十九歳の自殺率が三倍にもなったのだ。」(P151~152)
「このアンナ・フロイトの主張はあくまで理論であって統計の裏づけがないと主張し、実際に統計的な手法でそれを批判した人もいた。前述のシカゴ大学精神科教授のダニエル・オファーである。オファーは、二万人にも及ぶアンケート調査を行い、思春期に大混乱が生じる子どもは全体の五分の一にすぎないことを突きとめ、さらにそんなふうになった人のほうが、むしろその後の社会適応も悪いし、何よりも精神科的な病気になりやすいことを証明した。」(P152頁)
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(転載終わり)
和田秀樹 2003 「学力崩壊」
これはのちの時代に分かったことですが、自由主義で自由奔放なことは自体は悪くはないのですが、そこには共感してくれる対象と、目標を示してくれる理想の対象が不可欠です。この2つがないと大海原(おおうなばら)で羅針盤を失った船のように遭難します。
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テーマ : うつ病(鬱病)、メンタルヘルス
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